環境マネジメント
環境マネジメントに関する考え方と推進体制
当社グループは、スーパーマーケットを中心に事業活動を展開しており、安全安心な食材の調達を安定的に行い、地域社会の人々により充実した生活を提供し続けるためには、気候変動をはじめとする環境課題への対応が重要な経営課題であると認識しています。

当社グループでは、これまで環境委員会が環境活動の推進を行ってきましたが持続可能な社会の実現に向け果たすべき役割について、リスク管理委員会において、その洗い出しを行い、気候変動対応をはじめとする環境課題を企業価値向上を図る上でのリスクと機会と捉え、2024年1月に環境委員会を廃止し、リスク管理委員会において、環境マネジメントを全社的な視点から包括的に評価し戦略的なアプローチをすることとしました。
リスク管理委員会は、代表取締役社長を委員長、業務執行取締役を委員として構成し、オブザーバーとして常勤監査役が委員会に出席しています。リスク管理委員会では、方針の策定、環境マネジメントを担当する取締役の任命(上田英雄専務取締役)、リスクと機会の特定、指標と目標の設定のほか、取組計画の承認および進捗状況の監督等を行なうこととしました。
委員会は、年6回以上開催され、その議事内容は、委員会事務局(業務サポート部)が作成する議事録を取締役会に報告し、取締役会との連携を図っています。
なお、2023年度における環境関連の罰金等はありませんでした。
持続可能な社会の実現に貢献するため、環境マネジメントの重要なテーマとして、次の項目を選定し、各種施策を推進しています。
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政府が推進する「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、当社グループでは、2030年度までにGHG(温室効果ガス)排出量を2013年度比で50%削減する目標を設定し、再生可能エネルギーへの転換等、その対応を進めていきます。
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循環型社会の実現のため、事業活動から排出される資源ゴミだけでなく、販売した製品の包材等の回収を積極的に行い、資源利用量の削減に取り組んでいきます。
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廃棄物排出量削減のため、デジタル技術やデータを活用した発注数量コントロール、販売方法の見直し、食品リサイクルの推進を行い、排出量の削減に取り組んでいきます。
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その他、環境に対する負荷の軽減または回避、汚染の削減等に取り組むとともに、法令および規制を遵守いたします。
気候変動への対応
気候変動への対応については、金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言が推奨する項目に沿って、気候変動がもたらす当社グループの事業におけるリスクおよび機会を整理し、事業リスクの低減、GHG(温室効果ガス)排出量の削減に向けて取り組み、その情報開示の充実を図っていきます。
ガバナンス
気候変動への対応は、サステナビリティに関する取り組みを全社的な視点から包括的に評価し戦略的にアプローチするため、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会において、環境マネジメントを担当する取締役(上田英雄専務取締役)を中心に推進する体制となっています。
リスク管理委員会は、2か月に1度の頻度で開催され、気候変動領域における取組状況の確認を行い、その議事内容は、委員会事務局(業務サポート部)が作成する議事録を取締役会に報告し、取締役会との連携を図っています。
戦略
リスク管理委員会において、将来の「気候変動に対するリスクと機会の分析」を行い、それらが当社グループに与える影響について、下表のとおり、確認を行いました。
リスク・機会項目 |
内容 |
発現期間 |
影響度 |
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移行リスク |
政策と法制・技術リスク |
炭素税の導入 |
中期~長期 |
大 |
CO2排出量削減規制強化 |
中期 |
大 |
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代替フロン規制強化 |
中期 |
大 |
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プラスチック削減規制強化 |
短期~中期 |
中 |
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物理リスク |
市場・評判リスク |
エネルギー・原料調達コストの変化 |
短期~中期 |
大 |
消費者の行動変化 |
短期~中期 |
中 |
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ステークホルダーからの評価変化 |
短期~中期 |
小 |
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急性リスク |
異常気象による被害 |
短期~中期 |
中 |
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サプライチェーンの分断 |
短期~中期 |
中 |
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慢性リスク |
降雨や気象パターン変化 |
中期~長期 |
中 |
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平均気温・海水温・海面の上昇 |
中期~長期 |
中 |
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食料資源 |
中期~長期 |
大 |
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機会 |
製品・サービス |
消費者の環境対応商品嗜好 |
中期~長期 |
小 |
技術発展による新たなサービス |
中期~長期 |
小 |
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資源効率 |
物流の効率化 |
中期~長期 |
小 |
|
フードロス対策 |
中期~長期 |
小 |
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エネルギー源 |
地域コミュニティでの再エネ共有化 |
中期~長期 |
小 |
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高効率設備の普及 |
中期~長期 |
小 |
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再生可能エネルギーの普及 |
中期~長期 |
小 |
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レジリエンス |
気候関連のリスク・機会への対応能力向上 |
中期~長期 |
小 |
スーパーマーケットを中心に事業活動を行っている当社グループでは、移行リスクとして、冷蔵冷凍設備を多く有していることから、CO2排出量削減規制強化および代替フロン規制強化に伴い、エネルギー調達コスト、設備投資の増加が、また、物理リスクとして、食料資源の課題(品質・物量・コスト面での持続可能な調達の懸念)があると認識しています。
なお、気候関連のリスクおよび機会が、当社グループの事業、戦略、財務計画に及ぼす影響や気候関連のシナリオを考慮した戦略のレジリエンスについては、今後、分析を進めていきます。
リスク管理
気候変動におけるリスクと機会は、全社的なリスクマネジメントとして捉え、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会において、当社を取り巻くリスクの特定、リスクの評価と洗い替え、リスクの顕在化を未然に防ぐための体制整備や対策について策定しています。
指標と目標
政府が進める「2050年目標(カーボンニュートラル:CO2排出量実質ゼロ)」に向け、当社グループは、2024年1月開催のリスク管理委員会において、目標年度を2030年度とするGHG(温室効果ガス)排出量削減目標を決定しました。また、短期目標として、2027年度には基準年度(2013年度)と同じ水準にまで排出量の削減を目指していきます。
GHG排出量の大部分を占める電気の使用に伴う間接排出について、省エネ・創エネの取り組みのほか、2030年度までに電力使用量の50%以上を再生可能エネルギーに切り替えを行う等、削減目標の達成を目指していきます。
Scope3については、今後、ステークホルダーの協力のもと、順次把握を行っていきます。
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指標
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GHG(温室効果ガス)排出量
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目標
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目標年度 2030年度
Scope1とScope2のGHG排出量を50%削減する(2013年度比)
GHG(温室効果ガス)排出量(GHGプロトコルによる算定)
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2021年度 第63期 |
2022年度 第64期 |
2023年度 第65期 |
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Scope1 |
事業者自ら排出 |
燃料の燃焼による排出※1 |
4,404 |
6,392 |
7,267 |
フロン類の漏洩による排出※2 |
10,993 |
12,585 |
13,499 |
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Scope2 |
他社から供給された |
95,600 |
103,344 |
92,845 |
|
合計(t-CO2) |
110,997 |
122,322 |
113,611 |
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※1各拠点での都市ガス・LPガスの使用、社有車のガソリン使用、ボイラーでのA重油の使用
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※2各拠点での冷凍冷蔵設備および空調機器使用に伴うフロン類の漏洩(地球温暖化係数を乗じてCO2排出量に換算)
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※3各拠点での電力使用(自社商業施設でのテナント使用分を含む)
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※GHG排出量算定の範囲は、当社グループ全体です
温室効果ガス排出削減の取り組み
政府が推進する「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、当社グループでは、2030年度までにGHG(温室効果ガス)排出量を2013年度比で50%削減する目標を設定し、その対応を進めていきます。
GHG排出量削減の取り組みでは、排出量の8割を占める電気の使用に伴う間接排出を重点に、省エネ・創エネのほか、再生可能エネルギーへの転換を推進し、削減目標の達成を目指していきます。
電力使用量を抑える「省エネ」は、設備面では、店舗照明を蛍光灯使用時と比較して消費電力が約半分となるLED照明への切り替え、効率よく保冷する開閉式扉のショーケースの導入等を行い、運用面では、使用電力を見える化し、コントロールするデマンドモニターを全店に設置し、電力使用量の削減に取り組んでいます。
電気を創る「創エネ」では、物流センターや店舗において「太陽光発電」の設備導入を順次進め、CO2を排出しない再生可能エネルギーの採用を拡大しています。
2024年2月現在では、40か所の事業所に「太陽光発電」設備を導入し、2023年度には、CO2排出量3,703t-CO2に相当する845万kWhを発電しました。

「再生可能エネルギーへの転換」では、2023年5月から本社屋で使用する電力を100%非化石電源への切替を行い、373t-CO2相当の排出削減をしました。
今後は、2030年度までにGHG排出量50%削減(2013年度比)する目標達成に向け、電力使用量の50%以上を再生可能エネルギーへ順次切り替えを進めていきます。
また、GHG排出量の約10%を占める代替フロンについては、従来の代替フロンガスから自然冷媒を使用する冷蔵ケースを導入することにより、GHG排出量の削減に取り組んでいます(2024年2月現在、4店舗に導入)。
今後は、新店舗および冷凍機器の更新を伴う既存店舗の改装では、半数以上の店舗に自然冷媒機器を導入していきます。
物流における温室効果ガスの削減
商品配送等などの物流によるGHG(温室効果ガス)排出量を削減する取り組みとして、「運行管理システム」を活用しています。
車両運行データから状況把握を行い、エコドライブのための改善策をとっています。運行管理システムは、積載効率や配車効率をコントロールし、物流効率を最適化することで無駄な走行を減らし、GHG排出量の削減を行っています。
また、物流で使用する車両は、従来型に比べNOx(窒素酸化物)の排出を大幅に削減でき、自動車排出ガス規制に対応した車両への切り替えを進めています。ポスト・ポスト新長期対応(平成28年排出ガス規制)車両は、全定期便トラックの約8割になっています(2024年3月時点)。
自社物流という強みを最大限に活かし、物流の効率化、環境への配慮の取り組みを継続していきます。
循環型社会への貢献
当社グループでは、資源循環型社会への貢献の取り組みとして、スーパーマーケット事業の特性を活かしたリサイクル活動を積極的に推進し、資源利用量の削減に取り組んでいます。
全店舗の店頭に「リサイクルステーション」を設置し、ペットボトル・牛乳パック・食品トレー・アルミ缶等を回収しています。お客様には、販売した商品の包材を次回のお買物時にご持参いただくことで、普段の生活スタイルの中でリサイクル活動にご協力いただいています。回収ボックスの大型化や回収作業の効率化を図ることで、より多くの回収量を目指しています。また、店舗の営業に伴って排出されるダンボール、発泡スチロール、雑紙についても、店頭回収と同様に、リサイクルを行っています。

回収した資源ゴミは、自社配送の帰り便を活用して、物流拠点に隣接した自社「リサイクルセンター」に配送しています。リサイクルセンターは、2004年に開設され、回収した資源ゴミの減容および溶解処理を行い、2023年度には、ダンボール(28,290トン)をはじめ、38,078トンをリサイクルしました。


流通過程における資源循環では、廃棄物になりやすいダンボールを使用せず、サプライヤーと協業して、専用リターナブルコンテナの使用を推進しています。リターナブルコンテナを繰り返し使用することで、ダンボールの使用量の削減をはじめ、配送時の積載効率、店舗作業の効率化を図っています。(2023年度実績:1,734万回)
容器包装では、「容器包装リサイクル法」「資源有効利用法」等の法令に基づき、事業活動を行っていくうえで発生する容器包装等の資源利用量の削減のため、軽量化や再生原料の使用等に取り組んでいます。
お客様が店舗にお持ちになられた食品トレー等の再資源化や、レジ袋辞退のお客様に向け「買物袋持参割」「マイバスケットの推奨」により、お客様とともに環境負荷低減に向け取り組んでいます。なお、ベルクで使用しているレジ袋は、法令に基づく有料化の対象外となる、バイオマス素材配合率25%以上のものを使用しています。(バイオマス素材とは、動植物から生まれた再利用可能な有機性の資源です。)
廃棄物排出量の削減
廃棄物排出量の削減への取り組みにおいては、食料品を取り扱うスーパーマーケットにとって食品廃棄物の課題は、重要なテーマの一つです。
廃棄物の発生抑制では、ベルクの特長である本社主導型経営により、デジタル技術やデータ分析を活用し、専門部署「データコントロール室」が適正な発注数量のコントロールを行っています。また、商品化や販売方法の見直しにより、食品残渣の削減、売り切りに取り組んでいます。
発生してしまった食品残渣は、全店舗、全工場において食品リサイクル(堆肥化・飼料化・ガス化)を実施しており、ベルクの食品リサイクル率は63.8%(2022年度)となっています。また、微生物による分解処理機の設置(22か所)、脱水処理による運搬や焼却時の環境負荷の軽減に取り組んでいます。

2024年3月には、専門部署「フードロス対策室」を新設し、施策推進を深化させるとともに、サプライヤーとの協働により、サプライチェーン上のフードロスに関する課題の解決に取り組んでいきます。
資源の有効活用
水使用量の削減
水資源を有効に活用し使用量を削減することは、限りある水資源を将来にわたって使うために重要な取り組みテーマです。
世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct(アキダクト)」を用い、当社グループの拠点が立地する地域の水リスクの評価を行いましたが、2024年2月末時点において、高ストレス評価の事業所はありませんでした。
しかし、我が国の食料自給率および水の輸入の状況を鑑みると、水資源は決して潤沢とは言えないため、水使用量の削減に取り組む必要があると考えています。

ベルクでは、水使用量の抑制のため、水圧を高めることで水量を減少させ流水量を適正にする節水器を、2015年より順次設置し、2024年2月末現在では全店舗に設置しています。これにより、1店舗当たりの水使用量の2割減少を実現しました。
今後も、効果的な設備の導入検討のほか、店舗オペレーションでの改善活動を推進し、水の使用量削減に努めていきます。
なお、直近1年間における水使用に伴う水質および水量に関する法令等の違反事案はありませんでした。
水使用量 |
2021年度 第63期 |
2022年度 第64期 |
2023年度 第65期 |
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取水量(千㎥) |
930 |
958 |
1,005 |
排水量(千㎥) |
865 |
893 |
940 |
1店舗当たり取水量(㎥) |
6,292 |
5,777 |
5,764 |